男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)

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日本皮膚科学会が平成22年4月、診療ガイドライン(指針)を作成し科学的根拠に基づいて治療薬や植毛などを5段階で評価しました。

評価A 行うように強く勧められる
  • ミノキシジル(外用:男性は濃度5%、女性は1%)
  • フィナステリド(内服:男性のみ)
評価B 行うよう勧められる
  • 自毛植毛術(十分な経験と技術を有する医師が行うことが前提)
  • カツラ

※男性の場合は5%ミノキシジルの外用とフィナステリドの内服を、また女性の場合は1%のミノキシジルの外用を1年間続けて
 満足がいかない場合は、自毛植毛術やカツラの使用を勧める

評価C1 用いることを考慮してもよいが、十分な根拠がない
  • 塩化カルプロニウム
  • t-フラバノン
  • アデノシン
  • サイトプリン・ペンタデカン
  • ケトコナゾール
評価C2 用いない方が良い。根拠がないので勧められない
  • セファランチン
評価D 用いてはならない
  • フィナステリド(女性)
  • 人工毛植毛

【解説】
ガイドラインでは検証結果を、有効性やエビデンス(文献などによる科学的根拠)の良質さに基づいて5段階の推奨度で評価しています。
5段階では、「A=強く勧められる」「B=勧められる」「C1=考慮しても良いが、十分な根拠が無い」「C2=根拠が無いので勧められない」「D=治療法として行わないように勧められる」に分類されています。
治療に使用されている薬効成分のうち「A」に分類されたのは、ミノキシジル(外用)とフィナステリド(内服)です。ただし、フィナステリドは、更年期以降の女性で無効性が確認されたため、また妊娠中にプロペシア錠を内服すると男性胎児の外性器に異状を生じる可能性があるため、女性では「D」に分類されます。
医薬部外品・化粧品育毛剤(全て外用)の塩化カルプロニウム、t-フラバノン、アデノシン、サイトプリン、ペンタデカン、ケトコナゾールはいずれも「C1」に、セファランチンは「C2」に分類されています。
植毛術については、自分の毛髪を移植する自毛植毛は「B」ですが、化学繊維を使った人工毛植毛は感染症や頭皮のかゆみを訴える症例報告が多く、「D」に分類されています。

上記の内服薬や外用薬と自毛植毛を同列に論じることには多少の無理がありますが、いずれにしても市場に氾濫している、臨床効果のエビデンスが明確でない育毛・発毛剤や怪しげな育毛サロンに対する警鐘として、一石を投じたことになるでしょう。

ちなみにガイドラインによると、男性の場合は5%のミノキシジルの外用とフィナステリドの内服を、また女性の場合は1%のミノキシジルの外用を1年間続けて満足がいかない場合は、十分な経験と技術を有する医師が行うことを前提とした"自毛植毛"や"カツラ"の使用を勧めています。

プロぺシア錠(有効成分:フィナステリド)

2005年にフィナストテリドの発毛作用が厚生労働省の薬事承認を得、正式に医師が処方できるようになりました(現在、世界60カ国以上で承認されています)。フィナストテリドはそもそも前立腺肥大の内服薬として承認されていましたが、これを投与している患者さんに発毛効果が認められたことより、経口発毛剤として治験が開始され正式に薬事の承認を得たわけです。フィナストテリドの作用機序は、前述のテストステロンをDHTに変換するⅡ型の5α-還元酵素の活性を阻害するものです。わが国ではプロぺシア錠(萬有製薬)として医師から処方され、1日1回服用します。プロぺシア錠には0.2mgと1mgの2種類がありますが、効果は1mgの方が優れています。ただし1mg以上服用しても効果は変わりません。またプロぺシア錠は女性における男性型脱毛症には効果がないとされています(後述)。

フィナストテリドの有効性はプロぺシア錠1mg投与群で、頭頂部の改善率が1年で58%、2年で68%、3年で78%(うち著明改善6.1%、中等度改善37.4%、軽度改善34.3%)、前頭部の改善率が3年で72%(うち著明改善2.0%、中等度改善32.3%、軽度改善37.4%)と報告されています(萬有製薬プロぺシアのHPより)。最近、萬有製薬の宣伝で90%以上の患者さんにプロぺシアによる発毛効果が見られたかのごとく勘違いをされて見える方もいらっしゃいますが、実際には「98%の患者さんで3年間AGAの進行が認められなかった」というのが実情です(同)。確かに頭頂部の著明改善例においては地肌の透過性が低くなっていますが、これは3年間の連続投与でたったの6.1%に過ぎません。前頭部の著明改善例に付きましても、2.0%とされていますが、実際にはHPで前頭部の症例とされている写真には、前頭部におけるM字型のAGAが改善した症例写真は見当たりません。

また軽度改善例と中等度改善例における評価は微妙であり、すなわち抜け毛の進行を防止したり、細くなった毛髪を太くすることによって多少地肌が見えにくくなることがあっても(これらの症例を全て含んだものが改善率です)、他人から見て明らかな増毛効果が見られたと判断される症例(著効例)はわずかにすぎません。従って萬有製薬も効能・効果としては「男性型脱毛症の進行遅延」を謳っているのみで、ちなみにプロぺシアの説明書には、"本剤を6カ月以上投与しても男性型脱毛症の進行遅延がみられない場合には投薬を中止すること。また、6か月以上投与する場合であっても定期的に効果を確認し、継続投与の必要性について検討すること。"と書いてあります。一般に効果がある場合は内服開始後3カ月後から認められ、12ヶ月後に明瞭になり3年目ぐらいまでは改善傾向が持続します。従って明らかな薄毛や脱毛症において、十分に満足の行く増毛効果を上げる最適な方法は、自毛植毛とプロぺシア錠や次に述べるリアップの外用の併用療法しかないと言えます。またプロぺシア錠の内服を中止するとその効果は徐々に消失し、1年後には頭髪の状態はプロぺシア錠を服用しなかった場合の状態に戻ってしまいます。

下記は、プロぺシア錠の説明書から抜粋したものです。服用に際してはこれらの事項を十分にご理解の上、服用してください。

[1] 効能・効果
  1. 男性における男性型脱毛症の進行遅延。
  2. 他の脱毛症に対する適応はありません。
  3. 20歳未満での安全性および有効性は確立されていません。
  4. 女性に対する適応はありません(有効性が認められていません)。
[2] 服用方法
  1. 男性成人には通常、フィナステリドとして1mgを1日1回経口投与します(コップ1杯程度の水またはぬるま湯といっしょに飲んで下さい)。
[3] 使用上の注意
  1. 分割したり粉砕して服用しないでください。
  2. 効果が確認されるまで通常6ヶ月の連続投与が必要です。また、効果を持続させるためには継続的に服用することが大切で、万一服用を中止される場合は、必ずクリニックの医師にご相談ください。
  3. 増量による効果の増強は確認されていません(1日1mg以上は服用しないでください)。
  4. 1年間投与しても脱毛症の改善や進行遅延がみられない場合は、投薬を中止してください。
[4] 禁忌
  1. 本剤の成分(フィナステリド)に対し過敏症の既往歴のある患者。
  2. 妊婦または妊娠している可能性のある婦人、および授乳中の婦人。
[5] 慎重投与
  1. 肝機能障害のある患者:肝機能障害のある患者に投与した場合の安全性は確認されていません。
[6] 副作用
臨床試験において下記の副作用が報告されています。
  1. 性欲減退1.1%
  2. 勃起機能不全0.7%
    (プロぺシア錠の副作用として当初危惧された性機能障害(勃起機能不全、射精障害、精液量減少)は1年で2.9%でしたが、これはプラセボ群と有為な差はなく、現在は特に問題とされていません)
  3. その他、極めてまれに掻痒症、口唇・顔面腫脹、発疹、睾丸痛、乳房肥大・圧痛など
【その他の注意事項】
  • 更年期以後の女性の男性型脱毛症に対しては、有効性が認められませんでした。
  • 女性がが妊娠中にプロぺシア錠を内服すると、男性胎児の外性器に以上を生じる可能性があります。
  • 夫の精液を通して女性に吸収されるフィナステリドは、問題とされていません。
  • プロぺシア錠を内服してみえる方は、休薬後1ヶ月間は献血をお控えください。
  • プロぺシア錠を内服すると前立腺癌のマーカーである血清PSA値が約50%低下することが報告されていますので、服用中はPSA値を2倍に計算して下さい。50才以上の方の場合は内服開始前にPSAの値を測っておく方が良いでしょう。
  • 投薬前後の血液検査は特にいたしませんが、肝機能障害のある患者に投与した場合の安全性は確認されていませんので、肝機能障害を指摘されてみえる患者さんは服用をお控え下さい。

リアップ(有効成分:ミノキシジル)

ミノキシジルはそもそも経口降圧剤であり、これを投与している患者さんに発毛効果が認められたことより、米国の製薬会社ファルマシア・アップジョン社により外用発毛剤ロゲインとして開発されました。1998年にはミノキシジルが日本でも厚生労働省から薬事認可され、大正製薬からリアップ(有効成分:ミノキシジル1%)として一般薬局で発売されました。更には2009年より、リアッププラス(ミノキシジル 1%)に加えて、リアップX5(ミノキシジル5%、米国のロゲイン相当)、リアップレディ(ミノキシジル1%)が認可、発売されました。ミノキシジルは、前頭部の生え際の後退より頭頂部の薄毛に有効性が高いとされています。
安全性については米国のFDA(医薬食品局)で確認されていますが、狭心症、高血圧等の循環器系疾患の既往歴のある方は、事前に担当医にご相談ください。また、使用中に動悸や胸の痛みを感じた場合も使用を中止し、担当医にご相談ください。
ちなみに、以下のHPにリアップ外用に際してのセルフチェックシートが掲載されています。(http://www.taisho.co.jp/riup/riupx5/product_x5/self-check.htmlを参照してください)